いよいよZEP1聴き比べも今回が最終回。最終回は残っているUK修正マト1、通称「オレンジ」のスペック確認および聴き比べと、これまで3回実施してきた総まとめをしたいと思う。
Led Zeppelin UK LP (Atlantic 588171 Orange) 「オレンジ」
まずはジャケ写から。
先日のターコイズだった左上のZEPロゴ、および左下のアトランティックロゴが見事にオレンジ色に。USと同じである。ジャケの大きさはターコイズと遜色ない。
続いてレーベル面。
無修正マト同様、レッド/プラム配色。
違いはレーベルの下段の著作権クレジット。「1.2.4 Earner Bros / 7 Arts 3.Jewel Music」になっている。このクレジットから、以前ご紹介した記事のようにこの盤は「Ver.6」となる。
続いてデッドワックス部分。これも前々回の記事でご紹介済みだ。
しっかりと修正が入っている。
世の中にはこの修正、ジミー・ペイジのいたずらじゃないか?説とか、「そもそも無修正と修正マトで違いがあるのか?」説が囁かれているのも聞くが…所有者としてハッキリ言わせてもらうと、そういう噂は眉唾である。明確な意図があっての修正マト、であり無修正マトと修正マトでは完全に音作りが違う。
ということで早速音の方へ。
サウンドチェック!
まずはA1。
ターコイズに比べ高音が控えめである。ターコイズではギターがガッツリ前面に出ていたが、この修正オレンジではベース、ドラム、ギターの音がリバランスされて、ボーカルを中心に「バンド全体」で聞かせる音作りになっている。特にボーカルの歌、これがガツンと聞きやすくなっている。そしてUSオリよりもクリアな音である気がする。
前回の記事にてUSオリはちょっとこう、籠もった感じがすると書いたが、このUKオレンジにはその籠もった感じがない。それでいてパワーもあるし音のメリハリ、楽器の分離もとてもいいバランスだ。メリハリをはっきりさせたためなのか、音の勢いやフレッシュさはターコイズには正直劣る。それでもこちらのほうが個人的には聞きやすくていいかなと思う。
さて、A2。
アコギはやはりUSに比べると高音寄り。あんまりギブソン感はない。ターコイズであった音の奥行きも若干減衰気味だ。その代わり、と言ってはなんだが、プラントの冒頭の歌い出しの素晴らしいこと!!目の前で歌っているかのようなリアルさ。息遣いが聞こえるようだ。完全にボーカルに軸を置き換えて作ったな、と。問題の曲後半のクレッシェント部分の音割れのように聞こえた部分も解消されている。アコギが若干前に出ているが、シンバルの音も抑えめであくまで「曲を聞かせる」「歌を聞かせる」軸になっている。これが完成形なんだろうな、と感じた次第だ。
【聴き比べ】Zepファーストの三つ巴!UK無修正ターコイズ / UKオリ修正マト1 / USマトA/A PRプレス_まとめ
さて、以上で今回のZEPファーストの聴き比べは終了。
最後に、私の個人的な感想をまとめた一覧表を。
このような結果になった。数字だけ見ると一番良かったのはUK修正マト1、通称「オレンジ」だ。
もちろんこの結果は再生機材やその時の気分によっても違うだろうし、何より私個人の感想であって読者の皆様の感性とは異なることもあると思う。あらかじめご了承いただきたい。
【邪推】なぜジミー・ペイジはUKのマトを修正したんだろう?
最後にオマケとして私の邪推「なぜジミー・ペイジは修正マトをつくったのか?」を。
ターコイズ・オレンジ・USとも音の違いは明らかなので、やはり音の問題に気がつき、本人たちが気に入らなかったから修正せざるを得なかったのだと私は推測している。
ではその「気に入らなかった視点」とは何だったんだろうか?と、個人的な妄想でその理由を邪推してみたいと思う。
ジミー・ペイジがヤードバーズの後釜としての「ギターヒーローバンド」と見られるのを嫌がった
無修正マトを制作したが、この聞こえ方だとやはり「ギタリスト、ジミー・ペイジの新バンド」という見え方(聞こえ方)がしてしまう。レコード会社はやはりヤードバーズの後釜としてのツェッペリン、ジミー・ペイジがギターヒーロー!的な売り方をしたいのでそのようなMIXをしたが、当人はそれは納得できなかった。よって無修正マトは少量プレスした後にすぐに廃棄→リバランスした修正マトに差し替えた。
ジミー・ペイジがギタリストありきのバンドを目指してないのは明らかだったと私は思っている。彼は他のメンバーを尊重し、そして何より曲を大事にしている。ライブ音源を聞いても明らかに、見せ場はジミーだけでなく全メンバーにある。このターコイズは前々回の記事で書いたとおりどちらかというとギタリストアルバムに聞こえなくもない、そのへんが気に入らなかったので差し替えたんじゃないだろうか。
先に発売されたUSオリ盤を聞いて、慌ててUK発売前にミックスをやり直した。
ZEPのレコード会社はアトランティック(米国)。よってこのファーストアルバムはZEPの出身地であるイギリスより先にアメリカで発売されている(1969年1月12日)。
イギリスでの発売は2ヶ月後の3月28日。約2ヶ月の開きがある。ただ、おそらくマスタリング作業は同時並行で行われていたんじゃないかな?と思う
録音は南ロンドンのバーンズにあるオリンピックスタジオで9日間、30時間で録音されすぐにマスターディスクにカットする準備ができていた。(引用元:「レッド・ツェッペリン大全」CLASSIC ROCK編、前むつみ訳)
上記引用から、UK無修正のターコイズはすでにこのレコーディング直後にラッカーマザーが作られていただろうと思われる。そして発売は先だけどどこかのタイミングで1回だけ試作品を作った。(余談ですが、これがターコイズは2000枚?の理由かと思う。一つのスタンパーから作れるレコードの枚数はおよそ2000枚と言われている。)
同じくしてマスターテープはUSに送られ、アトランティックの当時の主力工場であるPR工場でUSオリのマスタリングがなされ、USオリの盤が完成。で、先程申したとおりUS盤がまず市販された、と。この市販されたUS盤を聞いて、ジミー・ペイジないし他のメンバーが「やべぇ、このUSのミックスに比べたらターコイズの音、ちょっと違うな…」と感じ、すでにターコイズは製品としては作られていたが慌ててストップし、修正マト=オレンジ、にミックスし直した。という流れなんじゃないかと。なので無修正マトは本来はお蔵入りのハズが誤って出回ってしまったということなんじゃないかな?とも思う。
※ただしこの理由だとターコイズの回に書いたVer違いの説明に「レーベルの著作権クレジット部分」で矛盾している気がする。
ここにも何らかの時差が発生したのか?
そしてオレンジロゴにした理由?
本来はオレンジロゴ=修正したマトですよ、の印だったんじゃないかと思うが、オレンジロゴなのに無修正マトが入っていたケースもある。
色々試行錯誤・妄想をしてみたが、一番わかりやすく腑に落ちる理由は単純に「なんだかんだあったが、ジャケットとかラベルはマトの修正とは関係なしに指摘があるたびにどんどん作り変えたんだが、中身入れる工場の人はそこまでの細かい話を気にせず出来たレコからどんどん封入していったw」ってことか?という至極適当な結論に行き着いてしまった私である。
以上、長くなったが邪推オマケ。
ご一読ありがとうございました!
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