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Tracy Chapman / CROSSROADS (US-ORIGINAL)_トレイシー・チャップマン「クロスロード」

Disk Review

日本から梅雨は無くなったのか?と思うくらいに梅雨入り宣告とともに酷暑の毎日。ジメジメ感はあるが太陽は容赦なく照りつける。

そんな夏は聴く音楽を選ぶのも億劫になってしまうところ。

こういうジメっとした次節には、長年の経験からSSWの音楽がしゃりしゃりしていて気持ちいい。

特に男性ボーカルものよりも女性ボーカルもの、アコースティックの弾き語りよりはバンド編成リズムあり、の方が昼間は良い。カラッと乾いたアコギがコードを刻み、ドラムとベースが軽快にリズムを刻み、女性ボーカルが爽やかに歌い上げる。

ということで今日はお気に入りの女性ボーカル夏コレクションからトレイシー・チャップマンの「クロスロード」を取り上げたい。

強い社会性メッセージを歌にするSSW、チャップマン

まずはトレイシー・チャップマンについて。1964年生まれのアフリカ系アメリカ人である。いつものようにWikiでざっくりとプロフィールを見てみよう。

トレイシー・チャップマン(Tracy Chapman、1964年3月30日 – )は、アフリカ系アメリカ人の女性シンガーソングライター。

(中略)

労働者階級の多いオハイオ州クリーブランドで生まれた。歌手の母親を持ち、幼い頃からギターを練習、幼少時から自作の曲を唱う。奨学金でマサチューセッツ州メッドフォードのタフツ大学に通い、生物学・獣医学・文化人類学、そしてアフリカについて学ぶようになり、次第にフォーク・ロックに魅かれ、コーヒー・ハウス(喫茶店)やナイト・クラブなどで、作詞・作曲した歌を唱っていた。

まもなく、1987年にエレクトラ・レコードと契約、デビュー・アルバム『トレイシー・チャップマン』(1988年)を発表。それまでの生い立ちで経験してきた社会の矛盾や、大学で学んだアフリカの知識などをベースに、社会問題をストレートかつシンプル表現したこのアルバムは大ヒットとなり、批評家などからも高い評価を受けた。翌年、このアルバムは第31回グラミー賞で、「最優秀新人賞」「最優秀女性ポップス・ボーカル賞」「最優秀コンテンポラリー・フォーク賞」の3部門を獲得し、世界で1,000万枚もの売上げを記録した。

Wikipediaより引用

デビューからいきなりのグラミー3部門制覇は凄まじい。そのデビュー作はこちらである。

今回取り上げるアルバムはこのグラミー受賞作の次に発表された彼女のセカンドアルバムである。

セカンド・アルバム「CROSSROADS」

和訳はシンプルに「クロスロード」となっている。まずはいつものようにスペックをチェックしていこう。

アナログレコード パッケージ

ジャケットはザラ紙使用の1枚もの。発売はデビュー翌年の1989年。レコードからCDへのソフト転換過渡期にあたる。よって現存する枚数はそれほど多くないようだ。

レーベル・マトリクス

レーベル面はこの時代のワーナー・エレクトラレーベルである。カッティングもDMMカット。Discogで規格番号検索するとUS盤ということがわかる。

凄まじくたくさんの情報が刻まれたRun Out(デッドワックス)部分。書き起こすと以下のようになる。

ST-E-60888-A-SP
ST-E-60888ADMM-3 MASTERDISK DMM SP1-1

とにかく長い。しかも手刻みマトだ。上記はA面だがB面も似たような感じである。

レコードの音質

レコードとCDの端境期にて、カッティングもDMMカット。サブスクとの聴き比べでは当然レコード盤の方がアナログの音の太さとボーカルの柔らかさ、および音場の広さよる透明感は若干サブスクよりも上に感じる。

ただ、そこまで顕著な差があるか?と言われるとそうでもない。近年の録音そのものがデジタルであって、あえてアナログ起こししたものと似たような感じ。ただしこの頃のレコード盤はモノとして非常に薄っぺらい。近年の新譜・再発盤レコードが軒並み重量盤で発売されていることを考えると、その半分くらいの質量しかない気がする。薄っぺらい、かつDMMなので溝も細い。つまりは傷つけやすい。この辺は難点である。

おすすめの楽曲

デビュー作の翌年にすぐ作られたセカンドアルバムなので、基本は前作踏襲の作風である。ただ、アルバムとしての統一感は本作の方が上に感じられる。たった一年しか経っていないがボーカルの深みも増している。

まずは本作のタイトル曲「CROSSROADS」

All you folks think you own my life
But you never made any sacrifice
Demons they are on my trail
I'm standing at the crossroads of the hell
I look to the left I look to the right
There're hands that grab me on every side
Mmm・・・Mmmm・・・

あなたたちはみんな自分の人生は自分のもの、と思っている
しかし、あなたは犠牲を払わなかった
悪魔は私を追いかけている
私は地獄の交差点に立っている
私は左を見て、私は右を見て
あらゆるところで私を掴む手がある
Mmm・・・Mmm・・・

All you folks think I got my price
At which I'll sell all that is mine
You think money rules when all else fails
Go sell your soul and keep your shell
I'm trying to protect what I keep inside
All the reasons why I live my life

皆さんは私が自分のもの全てを売り払って代償を得たと思っている
すべてが失敗したとき、みんなお金が物事を支配すると考える
魂を売り払い、自分を保て
私は自分の中に秘めているものを守ろうとしている
私が人生を生きる理由

歌詞はロバート・ジョンソン的ないわゆる「クロスロード伝説」をモチーフにしながらも、非常にシニカル。勝手な想像だがこれは「グラミーとったからなんでも手に入ったと思ってるだろうけど、そんなことはない。お金が手に入ったって得るものはない。自分の魂を守る方が大事なんだ。」という時点の彼女の気持ちを歌ったものではなかろうか。

「Subcity」とはここではスラム街や貧困街のことをさしている。「こんな街じゃ生活するのは苦しい、政府からの救済も受けられない」と朗々と歌い上げる若干25歳。歌詞を見ずに曲調だけで判断すればアメリカン・サマーソング的な朗らかさに溢れているのだが、中身はプロテストソング。ドラムのフロアタムが歌詞を盛り立てるように連動して効果的に使われているのも印象深い。

こちらはブルース調の一曲。黒人差別的なものを謳っている。歌詞とは裏腹にギターの刻むリズムにピアノ、ハープ、ドラムが軽快に絡む。

歌詞は強烈だが音だけ聞けば夏の一枚

ということで今回はトレイシー・チャップマンを紹介した。

歌詞を見ていくと基本的には孤独、人種差別や貧困問題、階級、愛、一部大企業の横暴などを歌うプロテスタントソングがほとんど、である。

ただ、これは日本人ならではの特性、とも言えるのだが、「基本英語が何言ってるかわからない」私のような人からすると、音として非常に夏っぽい一枚なのだ。日本語でこれを歌われると正直曲調が爽やかであってもなかなか気分も爽快、とはならないが・・・残念ながら?英語歌詞を聞いてそのまま理解できるほどのスマートさは私にはないので、歌詞部分は都合よく無視して音のみを楽しむことができてしまう。

これは役得なのか?いやそうではないと思うが。そういう楽しみ方もあっていい気もする。

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