酷暑にクラシックは・・・
2024年の夏は暑い。
例年暑いが、特に暑い。熱の残りっぷりが例年以上に感じる。
暑いとなぜか、クラシックに食指が伸びないのは私だけだろうか。特に暑いこの夏はクラシックから遠ざかっていた。ピアノソロを除くとほぼ3ヶ月以上クラシックを聞いていなかったのに最近気づいた。
残暑が酷暑の今時分、とはいえ時節的にはもう秋口、そろそろ久しぶりにクラシックが聴きたくなった次第。
とはいえ暑苦しいオケものはまだきつい。せめて器楽のソロないしアンサンブル、ソナタくらいがギリギリ聴ける気温である。
そんな折、私が今回「棚からひとつかみ」したのがシェクのデビューアルバムだ。
シェク・カネー・メイソン、みなさん覚えているだろうか?名前は覚えていなくても、この動画はなんとなく覚えている人も多いのではないだろうか?
2018年5月に行われた英国ハリー王子とメーガン王妃の結婚式でチェロを弾いた彼は、当時19歳。いま見てもとても堂々として、素晴らしい演奏(&結婚式)だ。
レコード需要増加で若手演奏家作品も続々とヴァイナル化
本ブログを読んでいる方ならすでにご存知とも思うが、私の音楽趣味は一言で言うと雑食である。ロック、ジャズなどの現代物はもちろんのこと、戦前のブルーズからラグタイム、民族音楽まで興味があれば傾聴してしまうタチだ。
もちろんクラシックも大好物。ただ、クラシックは歴史が長いゆえに演奏家の認知度新陳代謝が遅い気がする。数十年前のカラヤンやフルトヴェングラーのレコードがいまだにリマスター再発され、これが売れ筋の主軸となっているのは誰の目に見ても明らかだ。
もちろん売れ筋を否定する気はないのだが、世間的にも自分的にも積極的な新陳代謝を促していきたいと思っている。よって、若手の演奏家の作品は常に注目して言うところである。
音楽ソフトに関して言うと、つい数年前まではクラシックに関しては新作がなかなかレコードで発売されないことが多いように感じていた。ところが昨今のレコード需要の高まりからロックやジャズの新作に関しては徐々に「サブスク配信・CD・レコード」の3フォーマット発売のケースがデフォルトとなり、クラシックもようやく「サブスク・CD(SACDなどの高音質含む)」の2フォーマットに加えてある程度レコード化されることも多くなったように感じる。
ヒラリー・ハーンやイザベル・ファウストのようにレコードを積極的に出してくれる現役アーティストが増えることはアナログレコードファンとしては嬉しい限り。またレコード会社もアナログ需要増を受けて比較的柔軟にレコード盤の発売になってきている。
アナログファンとして、この傾向が長く続くことを切に願う次第だ。
Sheku Kanneh-Mason / Inspiration
さて、Shekuのレコードである。
このレコードはCD発売から2、3年たった、すなわち2018〜2019年ごろ、AMAZON経由でUKから取り寄せた。
私も彼の存在を皆様同様ハリー王子の結婚式で知ったわけで、それからぼちぼち調べていたら幸運にもアナログレコードで発売されているのを発見、購入に至ったという流れ。確か日本円で3500円くらいだったと記憶している。当時はまだ24年の1ドル=160円、なんて円安ではなかった。
結婚式での演奏曲は未収録も楽しめる収録曲
先に述べた英国ハリー王子の結婚式では以下3曲が演奏された。
Après un Rêve(フォーレ)
Sicilienne(マリア・テレジア・フォン・パラディス)
Ave Maria(シューベルト)
今日ご紹介のアルバムには残念ながらこの3曲はいずれも含まれていない。
雰囲気的にはアルバム収録A2「The Swan」(サン・サーンス)が結婚式っぽいが、ドンピシャではないのがちょっと残念。
選曲はA面はいわゆるチェロの名曲、加えてボブ・マーリー「No Women, No Cry」やレナード・コーエン「Hallelujah」(泣)のカバーもあり、クラシックにあまり馴染みのない方でもすんなり入れるような選曲。B面はショスタコーヴィッチのチェロソナタを丸っと全部収録している。
音に関して言うとプラシーボかもしれないが、やはりチェロの音はアナログ盤のほうがサブスクよりも幾分ふくよかに聞こえる。弦楽器は総じてデジタル出力よりもアナログのほうが太くメリハリの効いた音が聞ける気がする。我が家のシステムの影響もあろうが、同様に感じる人も多いのではないだろうか。
ちなみにちょっとオーディオな話をすると、ヴァイオリンやチェロなど、クラシックの弦楽器主体の協奏曲やソナタはMCよりもMMカートリッジで聴いたほうが音がビシビシ力強く、いかにも「あー、弦楽器鳴らしてるな〜」という感じがして私好みだ。しかもオルトフォンのような高級なものではなく、M44Gなどロック系のカートリッジの丸針でゴリッと鳴らしたほうが雰囲気マシマシに感じる。ぜひお試しいただきたい。
たまに聞くならとてもいい演奏
今回紹介の作品はいわゆるチェロのソロものだ。チェロのソロ、あるいはギターのソロものはなんでかメジャー曲でなんとか売り繋ごうと努力する傾向が全体的に見られる。本作も先ほど述べたボブ・マーリーのあの曲とか、飽きるから無くてよかったのにな…、と正直感じる。
だが、たまに聞くなら、別に耳障りではないし、むしろ力強い鳴りを聞かせる本作は酷暑の夏の一服の清涼剤としてはとても良いんじゃないかな?とも思ったので紹介してみた。
機会があればぜひ聞いてみてほしい。
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