ジャズ、特にピアノが好きな方に是非聞いてほしいゴルドベルグ。
グールドとはまた違う儚さと美しさがあって最近のお気に入りである。
グールドはデビューの1枚も、晩年の1枚もどちらも味わい深い。いまでも愛聴している。
ただ、どちらの演奏にも一種の張り詰めた緊張感があってなかなかリラックスできないのも正直なところ。その点、このゼルキンの1枚は心穏やかに聴ける、夜のお供にはピッタリの一枚なのだ。
Bill Evansの名作「Walts For Debby」のような、味わい深く可愛げのある、澄んだピアノのメロディが荒んだ心の傷にマキロン容赦なく振りかけた時のような「クゥっ…」とくる気持ちにさせられる。
甘く切ないならぬ、痛くも切ない、いや、痛いからつらいんだけどなんか悪くない、みたいな。
心の消毒液のような演奏です。甘酸っぱくはない。なかなか伝わりづらい表現で申し訳ない。
ちなみにこのゼルキンさん、あの高名なピアニスト、ルドルフ・ゼルキンさんの息子さん。
この後、同じ曲を都合2度録音→発売している。なにかしら節目のたびにゴルドベルグを録音しているようだ。
私は80年代録音のライブと90年代のRCA再録盤のどちらも聞いたが、1番良いのはこの1973発売の第一回録音盤だと思う。
若さゆえの尖った感性が一番音に出てる、若駒の無邪気さが絶妙にブレンドされた演奏が清々しく、重苦しくなくてよい。
レコードの音質も国内盤だがすこぶる良い。
さすがRCAレッドレーベル。
クラシックのレコードは高額じゃなくてもすこぶる音がいい名盤が多くてとてもよい。村上春樹「古くて素敵なクラシック・レコードたち」の気持ちである。
なにか一枚、レコード屋で、そう思ったら探してみてほしい。
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