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サラ・ヴォーン/ウィズ クリフォード・ブラウン(Sarah Vaughan with Clifford Brown)

Disk Review

冬の夜長の愛聴盤、サラ・ヴォーン

冬になると聴きたくなる曲がいくつかある。

「バードランドの子守唄」もそのうちの一つだ。

今日紹介するアルバムはその曲がA1に配置された、言わずと知れたジャズボーカル史上屈指の名盤。

ステレオの再発盤はいくらでも手に入るがやはりこの録音はモノラルで聴きたくて昨年購入した。

まずはスペックを見ていこう。

ジャケット・裏ジャケット・レーベル

EmArcyレーベルはMercuryレーベルの傍系でジャズで有名だ。

裏ジャケは青いインクで印刷されたいわゆる「ブルーバック」仕様。これが後期になると黒インク印刷のブラックバック、となる。ブルーバック=初期ジャケ、である。

続いてレーベル面。

レーベルの縁にシルバーの配色がなされている。通称「銀縁」である。

レーベル中央に描かれているのはドラマーだそうだ。このサイトによると、時代が経るにつれてこのドラマーの絵が小さくなるとのこと。なのでこちらは小さくなる前のドラマーということで「大ドラマー」となり初期盤ということになる。

マトリクスについては写真が撮りにくいので記載のみ。
Matrix / Runout (Variant 1: Side A runout): MG-36004-A
Matrix / Runout (Variant 1: Side B runout): MG-36004-B

リリース:Apr 1955

ちなみに購入価格¥48,000 (2022年8月)だった。結構高い…が、「一生持ち続ける愛聴盤」かつ「一生物は人生が残ってるうちに買え」という都合のいい格言に従い購入した記憶がある。もちろん毎日聞くわけでは無いが年に何回か、これからうん十年は聴き続けることを考えれば高くはない、という判断だった気がする。

オリジナル盤の良いところは音が新鮮、これに尽きる。レコードは特に当時の空気感みたいなものも録音に詰まっている感じがCDや他の音楽媒体との大きな違いだ。どうせ好きな盤で今後も何度となくいい音で聴きたい、と思えば当然オリジナル盤で所有しておくに越したことはない。

(・・・という理由でこれまでどんだけ散財したんだろう、俺・・・)

さて、続いて音の方に行こう。

オーセンティックジャズの極み、映画で見るあの時代の空気音

案の定、モノラル針で鳴らすとゴリッとした分厚い音が溢れ出る。昔のモノラルラジオを大音量で聴いているような、レトロな鳴り方。古いジャズはこれこれ、こうじゃないと。

スピーカーの中でサラがマイクスタンドととも歌っている情景が浮かぶ。

古い盤なのでオリジナル盤とはいえ多少のプチプチノイズ(スパイス)は入る。が、それが全く耳障りじゃない。むしろ雰囲気を盛り上げるのに一役買っているといっていいだろう。いやいや、そんなレコードのノイズなんて忌み嫌うものであるのはもちろんなのだが、このサラのアルバムに関してだけは違うような気がする。目の前で歌うサラ、をイマジネーションしながら聞けばやはりこう「音で色の褪せた情景を思い浮かべる」、これにノイズは多少は必要であろう。

アルバム全体を通してセピア色な情景が広がる、古き良きアメリカの酒場のような1枚である。

ただ残念だったのはこのアルバムの一番の推し曲である名曲「バードランドの子守唄」。このトラックだけ他のトラックに比べて音量が低いように感じる。録音年代がもしかしたら違うのか?いわゆるシングルカット後にアルバム収録されたためなのか?そこはよくわからないのだが、もう少し音圧があることを期待していたのだが…残念。とはいえ、それでも十分にパワフルなので及第点ではある。むしろ他の曲がどれも大変に素晴らしい音圧、何よりサラの声の前に出てくる感じがたまらない。

まぁ、値段は少々高い…ぶっちゃけモノ盤ならEXもVG++でも致命的なキズがなければモノ針で誤魔化せてしまう。奮発、ちょっと頑張りすぎた感もなくはない。

いや、いいんだ。俺はこのアルバムという物体にお金を払ったんじゃない。このレコードを聴きながら思い描くさまざまなこと、生き方・仕事・恋愛、その他このレコードを聴きながらお酒を飲みながら考えること。いい音を聞きながら頭の中で紡がれるであろう物語にお金を払ったんだと思うと、むしろ安い買い物だったとも思う。

近年、特にオリジナル盤が高騰している。特に名盤と言われるものはロックもジャズもうなぎのぼり。これは!というものだけを狙い撃ちで行こうと思う。

ご一読ありがとうございました。

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