前回の記事でディスクユニオンのレコードプライスリストが頒布されている件をお伝えした。
このプライスリストと、過去の歴代のプライスリストからロック名盤の買取価格の変遷を見ていこうというのが今回の企画だ。
現在私の手元にあるプライスリストは以下の通り。
- 2019 Winter(19冬)
- 2020 Spring(20春)
- 2023 Summer(23夏)
- 2023 Winter(23冬)
- 2024 Spring(24春)
- 2024 Summer(24年夏 ※前回紹介のプライスリスト)
特に面白そうなのはコロナ禍以前に出された2019年冬、2020年春のプライスリストとの比較。アナログレコードブームはコロナ禍でじわじわと盛り上がっていった感があった。おおよそ3年の雌伏期間を経て外出が解禁・海外からの渡航客も激増した後、レコードの値段も一気に上がっていった印象がある。
なお、幾つかお含みおきいただきたいことがある。
- ここで比較するのはあくまで「買取価格」、販売価格とは別物である点にご留意いただきたい。おそらく買取価格以上に販売価格はボラティリティ(価格変動)が激しいと思われる。
- リストでは毎号同じアルバムが取り上げられているわけではないので、欠落もあることに注意が必要だ。例えば19年冬に乗っているアルバムAの買取価格が、23年冬号には載っていないということもよくある。その場合は未記載という意味で「ー」と表記する。
- プライスリストには当然買取価格とともに注釈(当該マトリクス番号やジャケットについてなど、いわゆるスペック部分)も記載されている。基本的には最新のリストに合わせて記載しているが、詳細なスペックや盤コンディションなどは個体差があり、実際の買取時の値段とは異なることがある。これはレコード界隈では往々にして起こりうることだ。
よって、あくまで今回の比較については「参考」「趣味」「お遊び」の範疇にて楽しんでいただければと思う。店舗での買取価格が記載と異なっていても当方では一切責任は負えないので悪しからずご了承ください。
それでは第1回目はロックといえばの代表、The Beatles(ザ・ビートルズ)から始めたい。
一つお断りなのだが、先日紹介したプライスリストに実はビートルズのレコードは一枚も取り上げられていない。奇妙な話なのだが、もしかしたら別建で今後リストが頒布されるのかもしれない。
ということで、コスト推移は24年春のリストまで、ということで見ていきたい。
Please Please Me (STEREO) ※金パロステレオ
- 19年冬:ー
- 20年春:¥800,000
- 23年夏:¥800,000
- 23年冬:ー
- 24年春:¥1,000,000(前回比:125%)
大まか妥当な水準での推移かな、と思う。昔からPPMの金パロステレオ盤といえば三桁万円周辺、が販売価格だった。たまにコンディションが悪いものが60万くらいで販売されていたのも見ているが、良コンディションであれば100万は個人的には妥当かとおもう。そもそも現存する盤が少ないので、今後も買取価格は高騰していくと思われる。
Please Please Me (MONO) ※金パロモノラル
- 19年冬:ー
- 20年春:¥200,000
- 23年夏:¥200,000
- 23年冬:¥250,000(前回比:125%)
- 24年春:¥250,000
以前記事にもしたビートルズの金パロモノラル盤。詳しくは過去記事を参照してほしいが、レコードのパワー、音圧、音の素晴らしさを私が感じた最初の一枚だった。
ステレオに対して物量が多い金パロモノは23年冬に一度価格が上がっており、その後は大まか25万で推移しているようだ。ステレオに比べると買取価格1/4ではあるが、それでも25万はかなり高額の部類である。
RUBBER SOUL
- 19年冬:ー
- 20年春:¥25,000
- 23年夏:¥30,000(前回比:120%)
- 23年冬:¥30,000
- 24年春:¥30,000
ラバー・ソウルのラウドカット盤は若干の値上げでその後は価格安定、と言っていいだろう。
Revolver ※Tomorrow never knows別MIX
- 19年冬:ー
- 20年春:¥60,000
- 23年夏:¥60,000
- 23年冬:¥70,000(前回比:116.6%)
- 24年春:¥70,000
リボルバーのMIX違い。そこまで大きな値段の違いは見られない。むしろPPM、ラバーソウルに比較すると価格上昇率は抑えめ。とはいえレコードの値段として7万円は高額の部類だ。元々の買取価格も6万スタートなので、所有者としては高値安定で値崩れが起きていない、とポジティヴに捉えるべきだろう。
ABBEY ROAD
- 19年冬:¥25,000
- 20年春:¥20,000(前回比:80%)
- 23年夏:ー
- 23年冬:¥25,000(前回比:125%)
- 24年春:¥25,000
今回の価格推移比較では唯一19年冬のリストの掲載があったアビー・ロード。不思議なことに翌20年春には20%ほど買取価格が下がっている。その後23年冬に25,000円に戻って現状維持。
ただ個人的に付け加えるならばこの盤に関してはマトリクスが2/1なのは当然として、スタンパー番号が価格決定に最も重要な要素であるように思う。スタンパーがAB両面とも一桁、であれば当然この価格よりは値段が跳ね上がるはず。若いスタンパーの組み合わせほど、正直音も良い。私も両面2桁スタンパーと3桁スタンパーを実際に所有し聴き比べたが、圧倒的に若いスタンパーの方が音が良いのだ。
スタンパー番号の組み合わせは無数に存在し、片面が一桁、もう片面が2桁ないし3桁、という盤も存在する。その辺はプライスリストに記載するのがややこしいので入れていないだけだと思われる。アビー・ロードに関してはこの基準買取価格からスタンパー次第でもう少し値段が上がると見ておいていいと思う。
まとめと雑感
以上、今回はビートルズの高額盤に関する買取価格の推移を見てみた。
本来であれば全オリジナルアルバムに関してみていきたいのだが、発行号ごとにリストアップされているアルバムが異なるため、時系列で比較できそうなアルバムがこのくらいしかなかった。お店側の戦略であろうとも思うし、発行時期の需給バランスから店として買い取りたいアイテムを優先して掲載しているのであろうから致し方ない。
元々需要の多い人気作だらけのビートルズ、中でも最難関の一つであるPPM金パロステレオに関してはレコード界隈での大業ものだけあって流石のお値段だ。販売価格はいくらになるのやら…私には到底手が出ない価格な気がする。今後も価格高騰は続き、20年後にはインフレも相まって200万くらいになっちゃうんじゃないかな?なんて思う。
なお、ビートルズのスペック蘊蓄に関してはこちらの本が大変に詳しいのでお好きな方はご参考ください。
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