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NIRVANA / HORMOANING 90年代を代表する希少盤『ホルモウニング』

CD
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以前グリーン・デイのアルバム「Dookie」が今年(2024年)で30周年、という記事を掲載した。ご推察の通り、私は90年代〜00年代初頭がいわゆる多感な青春時代だったので、この頃活躍していたアーティストやアルバムについてはリアルタイムで記憶している。今日はそんな中から大好きなニルヴァーナ(NIRVANA)の当時激レア盤扱いだったアルバム「ホルモウニング」について書いてみたい。

1992年に日本とオーストラリアで限定リリースされたニルヴァーナのEP(CD)『ホルモウニング』は、彼らのディスコグラフィーの中でも特異な存在だ。全6曲というコンパクトな構成ながら、カバー曲とオリジナル曲が絶妙に組み合わされ、バンドの音楽的多面性を浮き彫りにしている。

なによりこの作品は、90年代CD全盛の時代に、ロックジャンルではいち早く「CDなのにレア盤扱い」であった。ご記憶の読者も多いのではないだろうか?私が高校生のころ、すなわち95年ぐらいには中古で3万円ほどの値付けされていた記憶が鮮明に残っている。

今回たまたま中古ショップで本作を2850円、という当時に比較すれば格安のお値段で入手することができた。いい機会なので本作について調べてみたい。

アルバムの概要

『ホルモウニング』は、ニルヴァーナが世界的な成功を収めたアルバム『ネヴァーマインド』と同時期にリリースされた。収録曲は既存のシングルB面曲やBBCラジオ「ジョン・ピール・セッション」で録音されたカバー曲が中心で、新曲は含まれていない。しかし、その選曲にはバンドの音楽的背景や影響を受けたアーティストへの敬意が色濃く反映されており、単なる寄せ集めではない統一感がなんとなく感じられる。

特に注目すべきは、ディーヴォやワイパーズ、ヴァセリンズといったインディーズシーンで活躍したアーティストたちのカバー曲。これらはニルヴァーナが影響を受けた音楽を知る上で貴重な手がかりとなる。また、オリジナル曲「Aneurysm」や「Even in His Youth」では、彼ら自身の音楽的個性が存分に発揮されており、新旧の要素が絶妙に融合している。

希少盤化した経緯と価格動向

このアルバムが希少盤となった背景には、いくつかの要因がある。まず、本作は日本とオーストラリアのみで限定リリースされたため、生産枚数が非常に限られていたこと。そして短期間で廃盤となり、その後再発されることもほとんどなかったことだ。

廃盤になった真相を調べてみたが、確証を得るまでは至らなかった。当時の私の記憶では確か権利関係の処理をうまく実施できていなかったため、クレームが入って生産中止となった、という話だったはずだ。加えて、後ほど掲出する帯にも記載されているが本作発売後にニルヴァーナは来日公演を行っている。本作はいわゆる「来日記念盤」的な位置づけであったことも短期間販売の要因であろう。

ちなみにオーストラリアでの発売数についてはDISCOGに詳細の記載があった。

Australian version is limited to 15000 copies (01/27/92):
10000 copies on CD
4000 copies on 12″ vinyl
1000 copies on Cassette

※DISCOGより引用

このような事情から、中古市場では早い段階で高額取引されるようになった。

2011年には「レコード・ストア・デイ」に合わせてアナログ盤として再発されたものの、オリジナル盤の希少価値には影響を与えなかった。現在ではオークションサイトや中古レコードショップで数万円以上の価格がつくことも珍しくない。特に日本盤は帯付きや美品の場合、さらに高額になる傾向がある。

DISCOGから引用。RSD再発された盤。

このような価格動向を見ると、コレクターズアイテムとして高い評価を受けていることがわかる。

収録曲について

本作には以下の6曲が収録されている:

  1. Turnaround(ディーヴォのカバー)
    オープニングを飾るこの曲は、ポストパンクバンド・ディーヴォの名曲をニルヴァーナ流に再解釈したものだ。原曲の持つ風刺的な雰囲気を残しつつも、より荒々しいギターサウンドとカート・コバーンの独特なボーカルで新たな命を吹き込んでいる。
  2. Aneurysm
    オリジナル曲でありながらライブでも頻繁に演奏されていた人気ナンバー。爆発的なエネルギーと緩急ある展開が特徴で、聴く者を圧倒する力強さを持っている。
  3. D-7(ワイパーズのカバー)
    ワイパーズというインディーズバンドへのリスペクトが込められたこのカバーは、ダークで重厚なサウンドが印象的だ。原曲以上にヘヴィな仕上がりとなっており、ニルヴァーナならではの解釈が光る。
  4. Son of a Gun(ヴァセリンズのカバー)
    ヴァセリンズへの愛情を感じさせるポップな一曲。シンプルながらキャッチーなメロディラインと軽快な演奏が心地よい。
  5. Even in His Youth
    初期ニルヴァーナらしい荒々しさと内省的な歌詞が魅力。この曲ではカート・コバーン特有の感情表現力が際立っている。
  6. Molly’s Lips(ヴァセリンズのカバー)
    「Son of a Gun」と同じくヴァセリンズのカバーだが、こちらはよりエネルギッシュでライブ映えする一曲だ。

これら6曲は、それぞれ異なる魅力を持ちながらも、『ホルモウニング』という一枚に統一感を与えている。特にカバー曲群からは、ニルヴァーナというバンドがどれほど多様な音楽から影響を受けていたかを感じ取ることができる。

個人的には2.Aneurysmが大好きな曲だ。高校時代にバンドでコピーもしたことがある。独特のコードリフと曲構成がとても新鮮であった。

今回の購入盤

それでは私が今回手に入れたCDについて見ていきたい。

まずはジャケット。なんともざっくりしたイメージ画、という感じがする。おそらく代表曲「Smells Like Teen Spirit」のMVからインスパイアされたものだろう。帯には定価1700円の記載がある。この頃はまだ消費税3%だったはずだ。

裏ジャケもまあ特に特筆すべきところはない。別途帯だけの写真も掲載しておく。

裏帯曲順記載部分に「1・3・4・6英BBC放送」とあり、これがLIVE音源。拙い記憶で恐縮だが、このBBCとの権利関係で揉めて廃盤になったのではなかったかな?と。

また帯にはツアースケジュールが刻まれている。このツアーを日本で見れた人が本当に羨ましい。私はまだ中学生だったかな?当然ながら見にはいけなかった。

最後にCDをば。本当にシンプルで特段なんのギミックもない。

本作の持つ意義

『ホルモウニング』はレア盤、という事実を除くと、一般的には単なる来日記念盤という位置づけかもしれない。だが、内容的にはとても優れていると個人的には感じている。ニルヴァーナというバンドがどこから来て、どこへ向かおうとしていたかを示す重要な作品だ。

本作には彼ら自身の楽曲だけでなく、自分たちに影響を与えたアーティストたちへの敬意や愛情が詰まっている。カバーアーティストからの影響は「MTVアンプラグド」ライブで存分に発揮されているが、初期の頃からこういった楽曲のカバーをやっていた、そのエレクトリックでのLIVE音源、というのは大変価値のあるものだと思っている。

また、本作はグランジというジャンル自体にも新たな視点を与えている。当時グランジは「粗削り」「反抗的」といったイメージで語られることが多かった。しかし、『ホルモウニング』に収録された楽曲群からは、それ以上に幅広い音楽性や深い文化的背景を見ることができる。この点こそ、本作が持つ最大の意義と言えるだろう。

まとめ

『ホルモウニング』は、その希少性だけでなく音楽的価値でも際立った作品だ。6曲という短い構成ながらも、多様性と統一感を兼ね備えた内容はファンのみならず幅広い音楽ファンに訴えかける力を持っている。また、本作を通じてニルヴァーナというバンドの背景や影響源を知ることで、彼ら自身だけでなく90年代初頭という時代そのものへの理解も深まるだろう。

発売から30年を経過して、いまではどの楽曲もサブスクで鑑賞することも可能だ。本CDも一昔前の価格高騰もどこへやら、数は少ないが値段的には手に入れやすくなっている。もしあの頃、憧憬の念で本作を中古ショップで眺めていた私のような方がいれば、是非とも手に取ってもらいたい。

あのとき手の届かなかったレア盤が手元にある喜び。ニルヴァーナという同世代のヒーローの、当時入手困難だったアルバム、それをいまようやくフィジカルで手に入れることは、物欲はもちろんのこと、なにかこう青春時代の忘れ物を取り戻したような、心を満たしてくれるアイテムであることは間違いない。

もしこのアルバムに触れる機会があるなら、その希少性だけに目を奪われず、その中身にも耳を傾けてほしい。この小さなEPから広がる大きな音楽世界に思いを馳せてみてほしい。代表曲の裏側にあるニルヴァーナのバックボーン、それが見え隠れするのが『ホルモウニング』という作品が持つ真価なのだから。

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