スポンサーリンク

【つづれおり】キャロル・キングの名盤ハーフスピードカッティング盤が思った以上に良かった件【Carole King / Tapestry】

Disk Review

キャロル・キングの名盤「つづれおり」

大名盤である。

文句のつけようがない、ロック史上に輝く1枚であることは間違いない。

こういうアルバムこそぜひとも初版で手元に置きたい、こう思うのがレコード愛好家の性なわけだ。

私もここ数年、本作のオリジナル初版を手に入れたいと思っている。だが残念、ディスクユニオンのセールなどでもたまに出品はあるのだが、コストが折り合わなかったり、あるいは先に別の人に確保されたり、でどうにもめぐり合わせが悪いのだ。

もちろん本作の初版ではないモノはUKオリジナルやUSの第2版では所有している。こちらもある程度音はいいので、別に初版じゃなくても、、、とは思うところだが、やはり初版がほしい。ただ、巡り合わないので手に入れようもない。

そんななか、ある日いつものようにレコ屋の棚(餌箱)を漁っていたら、こんなのがでてきた。

ハーフスピードカッティング・プロモ入り

Carole King / Tapestry (US Half Speed Mastering_PROMO)

ハーフスピードカッティング盤である。平たく言うとレコードの溝をきるときのスピードをいつもの半分にすることでより丁寧な音作りを心がけた盤ということだろう。

しかも、PROMOのスタンプがついている。

裏ジャケの左上拡大。プロモスタンプが箔押しされている

レコードマニアとしてはこの「PROMO」という表記に弱い。同規格の通常版よりも音が新鮮でよい、はずである。

いわゆるリマスター盤の類には、「MFSL」(モービルフィディリティ)「Analogue Production」(アナプロ)、あるいは元々の発売レーベル独自のリマスターなど様々あるが、これも好き嫌いの分かれるところ。

私は以前本作の国内の再発重量盤(上記で言うところのレーベル独自リマスターと思われる)を買ったことがあるのだが、高音がどうにもキンキンしていて高音質、というよりはドンシャリ盤だったので売っぱらってしまった。

果たして今回はどうだろうか?以前の失敗経験から多少気は引けるが、オリジナル盤に出会う可能性もなかなか無かろう…。本作に対する心の欲求の妥協点を探るような気持ちで購入してみた。お値段8,750円。

ディスクレビュー (TLC?)

ディテールチェック

先程裏ジャケのプロモスタンプは拡大したが、レーベル面も見ていきたい。

レーベル面。当然オリジナルとは異なる。3時方向に1980と記載があることから本盤は1980年制作であろう。
A面マトリクス [HAL-44946-2A]
B面マトリクス [HBL-44946-1F]

マト盤はA面が[HAL-44946-2A]、B面が[HBL-44946-1F]。Discogの該当ページを見てみたが、このマトと末尾が[1D / 3C]のものしか記載がない。

このレコードはAudiophile=マニア・愛好家向けのプレスであるし、これほどの名作なので通常盤も同時期に流通していたであろう。つまり、高音質盤への需要はそこまで高くないと思われる。

もともとのプレス数自体がわからないので推測の域ではあるが、本盤はプロモ盤ということもあるので、一般流通よりは製造が早い、すなわちこれがファーストプレスではないだろうか。

TLCとは?

他に情報はないか?とジャケットやレーベルをまじまじ見ていると、裏ジャケの下段に「Mastered with TLC at Half-Speed at the CBS Recording Studios.NY」の表記があった。

三段落目にTLC

ここでいうTLC?というのは初見である。TML=The Mastering Lab、のような略称か?と仮説を立てていたが、そちら方面で検索しても全然出てこない。むむ、どうしたものか…

そこで原点に立ち返り、シンプルに英会話辞典的なサイトで調べたらこんな記載が。

TLC : Tender Loving Care、の略。すなわち「愛情」とのこと。

英語圏の人はこのTLC、頻繁に使うのだろうか?私は聞いたことがないのだが、、、しかしなんとも気の利いた言い回し。でも略せばいいってもんじゃないが。3文字略語の先駆けかもしれない。

つまり「Mastered with TLC at Half-Speed at the CBS Recording Studios.」→「ハーフスピードの愛情仕上げでマスタリングしたよ」ってことなのだろう。

正直、こんなオチだとは思わなかった。でもスッキリ。

サウンドチェック

さてさて、肝心の音の方だが、US盤にあるまじき?繊細さがしっかり出ている。これはびっくり。もうちょいがさつ(失礼)かと想像していた。

音の作りが丁寧で音圧もしっかり。音域のバランスも自然で変に高音や低音に寄ったものではない。

音場が広がり、これまでわずかにしか聞こえなかった、後ろの方で鳴ってるハイハットの音やギターの弦の響きがよく聞こえるようになっている。所有しているUKオリジナル盤やUSセカンドプレスよりはクリアネスが増しておりいい感じだ。

所有していないUSオリジナル初版との比較はできないが、正直これはアリだとおもった。

まとめ:この盤は見つけたら買い!

正直半信半疑で購入したが、結果大成功だったと思う。

先にも触れた国内盤でのリマスター盤や、MFSL(こちらは試聴だけして早々に離脱した)とは比較にならないくらい良い。いかんせんリマスター盤とはいえ製造から40年が経過しているので、ジャケット含め程度の良いものが現存しているかどうか…は正直厳しい見立てではあるが、個人的には1万円以下なら購入しても良いのではないかと思う。

こういう名作は一家に一枚はあるものだ。なので、あえて買い直さなくても、という気持ちもわかる。ただ、好きな作品ほどやはり、よりいい音を求めて盤を堀続け、買い続けて、自分にとって音的にもコンディション的にもベストの1枚にいつかたどりつきたい…レコマニアの悲しくも楽しき性よ。

まさに巡礼。レコード巡礼。

ご一読ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました