古くて素敵な、かつ安価なクラシックレコード
前回の「イタリア弦楽四重奏団」の演奏、およびジャケが非常に良かったこともあり、最近は平場の平場のレコード箱に入っている、良さげなジャケのレコードを探しては店頭で視聴を繰り返すということをやっている。
今回ご紹介するブダペスト弦楽四重奏団もその1枚。なんと大晦日の「今年最後の一掘り」で偶然見つけてしまった1枚だ。
ブダペスト弦楽四重奏団について
まずはこの楽団についての基礎知識から学んでいきたい。
ブダペスト弦楽四重奏団は1917年にオーストリア=ハンガリー帝国(現・ハンガリー)のブダペスト歌劇場管弦楽団のメンバーによって結成され、メンバーの変遷を遂げながら1967年2月まで活動した。
1938年からアメリカに定着して活動し、最終的なメンバーは全員ロシア人となり、ハンガリーおよびブダペストとは関係が無くなったが、名声を得たのはロシア人のヨーゼフ・ロイスマンが第1ヴァイオリンとなって以後(在籍期間が1927年〜だが第1ヴァイオリンになったのは1932年〜)だそうだ。
最終的にメンバーは全員ロシア人となり、活動の拠点もアメリカに移ることから、ハンガリーおよびブダペストとはあまり関係がなくなってしまった。1940年から長年にわたりアメリカ合衆国の議会図書館つきの弦楽四重奏団としても活躍していた。なお、この後継になるのがジュリアード弦楽四重奏団である。
色々調べていたら、彼らに対するジョークが載っていたので面白いので引用する。
What is one Russian? An anarchist. Two Russians? A chess match. Three Russians? A Communist cell. Four Russians? The Budapest String Quartet.
Wikipediaより引用
「ロシア人が一人いたら何者だろう?そいつは無政府主義者だ。二人いたら?チェスの試合だ。三人いたら?共産主義グループだ。それではロシア人が四人いたら?それはブダペスト四重奏団だ。」
(ヤッシャ・ハイフェッツが言い出したとされるジョーク)
いかにも戦前戦後のアメリカ、って感じのジョークですな。極端www
代表的録音は、ベートーベン弦楽四重奏曲全集、ピアニストのルドルフ・ゼルキンを招いて演奏したブラームスのピアノ五重奏曲、ワルター・トランプラーを迎えて演奏したモーツァルトの弦楽五重奏曲など。SP盤時代から録音をしていたということなので、同じ曲でも何種類か録音が残っているようだ。
本作:ブダペスト弦楽四重奏団「ENCORE」について
さて、では早速本作について見ていきたい。まずはジャケット。
非常にポップなジャケットである。このジャケに惹かれて今回は購入したわけである。お値段はなんと680円、からのディスクユニオン大晦日セールで10%オフ、という。安い!
いやぁ、いいものがお安いということほど興奮することはないねwww
これぞレコ掘りの醍醐味ってやつですな。
裏ジャケはこんな感じ。よくある文字だけのやつだ。
Discogsによると、このレコードは1956年発売。
裏ジャケの説明によると、すでにこの時点でメンバーは全員ブダペストとはゆかりがなくなっていることが記載してある。
Although the Quartet consisted originally of Hungarians, none of the present members come from-or have even been in-Buda-pest!
裏ジャケの説明書
またこのアルバムのタイトル「アンコール」についての説明書きもある。
The Budapest Quartet has recorded ex-clusively for Columbia since 1940. The nine
裏ジャケ説明書より
‘encores’ recorded here are not encores in the sense of light program-enders, then, but in the sense of nine pleased responses to the prolonged applause (necessarily unheard) of millions of record listeners all over the world.
平たく訳すと「ここに収録された9つの『アンコール』は、軽いプログラム・エンディングという意味でのアンコールではなく、世界中の何百万人ものレコード・リスナーの長時間の拍手(必ずしも聴こえないが)に対する9つの喜ばしい応答という意味でのアンコールである。」という感じかと思う。(わかりにくいな・・・)
要は「皆様のご期待にお応えしてこんなのやって見ました」ということかと。
収録曲も裏ジャケに記載がある。
いわゆるオムニバス形式である。個人的にはいろんなタイプの弦楽四重奏が聴けるのでこれは大歓迎。大概、一人の作曲家の長い交響曲やソナタをコンパイルする形式が多いクラシックではオムニバスには手を出しづらい。が、弦楽四重奏ならお手軽さも相まって違和感はそれほど感じない。
写真だと見にくいので一応文字起こしも入れておく。
A1 Andante Cantabile (From “Quartet No. 1 In D Major, Op. 11”) / Composed By – Tchaikovsky*
A2 Serenade (From “Quartet In F Major, Op. 3, No. 5”) / Composed By – Haydn*
A3 Intermezzo (From “Quartet No. 2 In G Minor, Op. 27”) / Composed By – Grieg*
A4 Scherzo (From “Quartet In D Major”) / Composed By – Franck*
A5 Notturno (From “Quartet No. 2 In D Major”) / Composed By – Borodin*
B1 Canzonetta (From “Quartet No. 1 In E-Flat Major, Op. 12 / Composed By – Mendelssohn*
B2 Quartettsatz In C Minor, Op. Posth. / Composed By – Schubert*
B3 Scherzo (From “Quartet In G Minor, Op. 10 / Composed By – Debussy*
B4 Italian Serenade / Composed By – Wolf*
レーベル面はいわゆる「6 EYE」である。ボブ・ディランやマイルス・デイヴィスなどロックやジャズのアーティストの6EYESのモノ盤というと大概が高嶺の花だが、クラシックだと全くである。ラベル3時方向に「ML5116」とある。「ML」ないし「CL」で始まるものはコロムビアでは「モノラル」であるため、この盤はモノラル盤だ。なお、当該部分がMSないしCSで始まっていればステレオだ。
サウンドチェック
さて、音のチェック。
盤質はB、との記載で購入したが、ノイズはそこまでひどくなく、いわゆる「スパイス」効果レベル。モノラル盤+スパイス=ノスタルジー、の「古くて素敵な」クラシックの公式通り、そこはかとない鄙びた風景を描いている。ヴァイオリンの枯れた音色にチェロのピチカートがしっくりハマるA1、強烈なイントロから始まるA3など、古典〜近代に至るまで多くの作曲家の曲を一枚で楽しめるのが本オムニバス盤の良さ。全体を通して緩やかに揺蕩うような弦楽四重奏だ。朝のボーッとした時間のおめざ、や昼のティータイムあたりにはぴったりのレコードではないだろうか。
なお、奇特な方が らっしゃってこの音源はYOUTUBEで全曲が視聴可能だ。是非ともご一聴いただきたい。
サブスクサービスでも視聴・購入が可能だ。
物理メディアはAmazonで検索した限りは見つからなかった。私同様、レコード屋さんで掘っていくしかないかと思うが、このジャケットも美しいのでぜひ探してもらえればと思う。
本日もご一読ありがとうございました。
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