最近のお気に入り 23年12月
本原稿執筆は12月28日、俗にいう仕事納めの日である。
本年は幸い、本業は早めに仕事納めが叶い、26日終了→27日は体力回復デー→本日、という流れである。年の瀬だというのに特にやることもないのでダラダラしてしまいそうだ。
ご多聞に漏れず、12月もレコ屋通いは続き、相変わらず多くの音盤を購入した。その中から特にお勧めを数枚ご紹介したい。
ソフト・ブルー・シマー / ヘヴン・インチズ・アウェイSoft Blue Shimmer / Heaven Inches Away
偶然の出会いだった1枚。新宿ユニオンレコードでレコ掘りをしていた際にたまたま店内BGMでこれが流れていた。ハードなギターに女性ボーカル、切ないメロディが琴線に引っかかった。レコ掘りしてるつもりがいつの間にかアルバムを聴き込んでしまい、お気に入りに。そのまま店頭展示してあったLPで購入してしまった。
ソフト・ブルー・シマー(Soft Blue Shimmer)はロサンゼルスを拠点に活動する3人組。ギターとボーカルのチャーリー・クロウリー、ドラムのケンゾー・カルデナス、ボーカルとベースのメレディス・ラモンドで構成される。ジャンル括りは苦手とのことだが、シューゲイザー、ドリームポップ、ノイズポップあたりじゃないかと本人たちは語る。
日本ではGalaxy Trainレーベルから作品をリリースしている。2019年に「Nothing Happens Here-EP」でデビューし、本作は2020年発売の通算2作目、実質1枚目のアルバムということになるようだ。
本人たちが語るように第一印象はマイブラの轟音残響シューゲイザーサウンドにダイナソーのようなぶっきらぼうなギターのカッティング、それにニルヴァーナ的なドリブンベースが混じり合ったポストグランジ、のようなイメージだったが、聴き込んでいくとどちらかというとGALAXY500のオルタナ感に近いものを感じる。ヴォーカルが女性ということもあるのだろう、轟音ギターではあるがそこまでハードには感じない。切ないメロディがふんわりと心に染み込む。
インタビューによると上記YT「chihiro」は宮崎駿の映画「千と千尋の神隠し」の主人公、千尋からネーミングした曲だそうだ。
私が好きなのはこちらのSunpools。メンバーのKENZOは日本人?なのか日本の血を引いているからなのか、非常にメロディーが日本人の心根にハマる。USの他にあえて日本でリリースしようと考えたというのも頷ける出来である。これは日本人好みサウンド。
まだまだメジャーな存在ではないが今後も楽しみなバンドを見つけたことが嬉しい。
ダニール・シャフラン / アンコールDaniil Shafran / Encores
続いてはこちら。ロシアのチェリスト、ダニール・シャフランの秘蔵音源集。
ダニール・シャフランは1923年ロシアのペトログラード(現サンクトペテルブルク)生まれのチェリスト。第二次世界大戦前のソ連コンクールで第一等賞を受賞するが戦争の影響で活動が限定的に、戦後はロストロポーヴィッチの台頭もあり、どちらかというと影が薄い印象ではある。
ただ、「チェロの詩人」と言われるその演奏スタイルがロストロポーヴィッチのゴリっとしたものとは異なり、どちらかというとフランスのチェロの貴公子、ピエール・フルニエに近いものを感じるので私的には断然好みなのだ。
本作は91年に録音されたものだそうだ。公式によるアルバム解説を引用する。
「本アルバムでは、シューマンのトロイメライや、チャイコフスキーの白鳥をはじめとする名曲を中心に、原曲はチェロのために作曲されなかったが、シャフランの同僚たちによって20世紀初頭あるいはそれ以前に編曲された作品が収められています。「チェロの詩人」と称された名匠による傑出したテクニックと、抒情性に満ちた美しい音色に魅了されるアンコール集の登場です」
発売・販売元 提供資料 (2023/10/11)
残念ながらソフトはCDのみでLPでの発売はない模様。早速購入して聞いてみたが、解説にある通り抒情的、かつ、70〜80年台録音よりも柔らかめの演奏だな、と感じる。メロディアから出ている「バッハ無伴奏」ほかいくつかを私はLPで所有しているが、そちらよりも音も柔らかに感じる。やはり晩年の録音だからか、棘が落ちて熟達の境地にようなところに至ったのだろうか?
91年録音なので音質は全く問題ない。が、ほぼ全曲にわたって演奏中にシャフランと思しき唸り声が随所に入っているのが非常に残念である。キースジャレットで慣れているので私はあまり気にならないが、耳に障る人もいるかもしれない。
シャフランは協奏曲よりも小品がとても良い、と昔から言われているが、この1枚はそういった点ではシャフランの魅力を余すとこなく感じるにはぴったりの一枚である。
福来スズ子傑作集 / 福来スズ子&趣里
さて、今月の最後はNHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ!」でお馴染みの福来スズ子の傑作集。
ドラマをご覧の皆さんはご存知だと思うが、このドラマは笠置シズ子をモチーフにした戦前戦後の歌姫を描いた作品である。笠置シズ子、こと福来スズ子を演じる趣里が歌い、原曲を作曲した服部良一の孫・服部隆之がアレンジをしている。
お馴染み「東京ブギウギ」はもちろんだが、出色はやはり「ラッパと娘」ではないだろうか?(動画埋め込みができないのでリンクよりご覧いただきたい)
原曲でももちろんスイングしているのだが、このアレンジ!まるでEgo-Wrappin’なのだ。
ちなみに原曲だとこんな感じ。
ドラマでは草彅剛演じる服部良一、こと、羽鳥善一が「スイングしたいんだ、僕は」というシーンがよく出てくるが、「あ〜、なるほど。戦前昭和にすでにジャズの芽が出ていたんだな」と感慨深く思う。
NHKではたまに歌物主役のドラマをやっているが、このドラマはそういった意味では当たり!だと思っている。こういったカバー作品集が出ているというのも嬉しい限り。
ソフトはCDのみのようだ。私は気軽にサブスクで楽しんでいる。暮れの押し迫ったタイミングに聞くとちょっとノスタルジックな気持ちになって良い。
まとめ
今年も終わり、ということで出来れば年間の振り返りもやりたいなぁ、と思ってはいるが、いつになることやら…
まずはみなさま、今年もお疲れ様でした。
来年も良い音楽との出会いがありますことを!
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