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【祝・新作】いまこそ”超・初期盤”でビートルズのデビュー作を聴く!

Disk Review

The Beatlesのラストソング「Now and Then」、急遽発売決定!

23年10月末、突然衝撃的なニュースが舞い込んできた。

ビートルズのラストソング「Now and Then」が、急遽発売されることが発表されたのだ。最後の新曲である。

「ナウ・アンド・ゼン」は、11月2日(木)日本時間午後11時に、全世界に向けてリリースされる。この両A面シングルは、最後のビートルズ・ソングと最初の曲、つまり1962年の英国でのデビュー・シングル 「ラヴ・ミー・ドゥ」が対になっている。両曲ともステレオとドルビーアトモス®でミックスされ、有名アーティスト、エド・ルシェによるオリジナル・ジャケット・アートがフィーチャーされている。「」ナウ・アンド・ゼン」の新しいミュージック・ビデオは11月3日(金)に初公開される。世界的なプレミアの予定など、詳細は追って発表の予定。

https://amass.jp/170705/ より引用。太字・下線は筆者による。

オフィシャルのトレイラー映像も出ていた。残念ながら現時点で音については聞けないが、元気なポールの姿を見れて嬉しいファンも多いのではないだろうか?

ストーンズの新作発表から1週間足らずでこのビックニュース。藪から棒にもほどがあるわ(笑)

まるでストーンズの新作が大絶賛されてチャート1位を獲得するのを見計らって出してきたかのような待ち伏せ感すら感じる。(言い過ぎか?)

いずれにせよこのサプライズニュースを受けてオールドロックファンはお祭り騒ぎである。私も素直に嬉しい。「いまさら…」という諦念よりも、「まだあったか!」と素直にバンザイである。

リマスターはステレオミックス!いや、ちょっとまてよ・・・

さて、先の記事によると、この新作は今回も様々なフォーマットで発売されるようだ。LPは7インチ(カラーヴァイナル)、12インチ、カセット。なぜかシングルCDは出ないようだ。

その代わりなのか、おまけなのか。「赤盤」「青盤」のリマスターも発売される。このリマスターには新作も追加され、フォーマットもLPだけでなくCDでも出る。


明らかにレコードブームに乗っかった販売戦略であることは自明の理であるが、それでもビートルズの純粋な?新作が出るのだ。販売戦略でもなんでも乗っかっておきたくなるのがファン心理。

そもそも新作なんて、30年くらい前の「Free As A Bird」「Real Love」以来であるからファンにとってはたまらない。

新作「Now and Then」のリリースにもあるが、カップリングはデビューシングルの「Love Me Do」とのこと。両曲はステレオとドルビーアトモス®でミックスされているそうだ。

…で、ここで一言、ファンとしては申し上げたい。

なぜ新ミックスはステレオのみなのか(爆)

「いや、そりゃそうだろうな…いまどきモノラルにこだわるなんてどこのマニアだ!」(俺だw)と思いつつ、あえて言わせてもらう。

なぜモノラルミックスは出ないんだ!

モノラルも新規ミックスしてドカーンと音圧がある音源にしてくださいよ!と。

クラシックなんかだと「モノラルを新規リマスターしてモノラルで!」なんと事もたくさんある。15年ほど前にモノラルミックスはBOXで発売しているが、最新技術を駆使してよりクリアでパワフルな2023年版新ミックスもあっていいんじゃないか!と。音圧マニアのわたしは切にそう思っている。

ま、仕方ないんですがね(笑)

ということで、復習の意味も込めて久々にビートルズのファーストアルバムをモノラルで爆音で聞きたくなった。せっかくだから新リミックスで出る前にモノラルで「ラブ・ミー・ドゥ(Love Me Do)」を久しぶりに棚から取り出して楽しんでおこうと思った次第。

実は私、これに関してはお宝盤といっていい盤を所蔵している。

今回はこのお宝盤をレビューしたいと思う。

金パロ・モノラル→なんとスタンパー「1G/1G」!!!

言わずとしれたビートルズのファーストアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー(Please Please Me)」、今回取り上げるのはいわゆる「金パロ・モノ」の超初期プレスである。

スペック:「The Beatles / Please Please Me (UK ORIGINAL MONO MAT 1N/1N stamper 1G/1G)_PMC1202

まずはジャケット・レーベル面などを見ていきたい

画像1
初版ジャケ。右上の「mono」の表記が他版に比べて大きい
画像2
初版の「Angus McBean」表記は他版に比べて若干右寄り
画像4
フリップバックジャケット。3方の表面の余白を裏に折り返して接合しているジャケット。
画像3
スリーブはErnest J.Day製

紛うことなき金パロのモノ盤なのだが、驚くべきはスタンパーなのだ。

スタンパー1G/1G !!!!!!!!

画像5

上記はディスクユニオンで購入時に盤についていたPOPである。

「!」マークの6連打(笑)

お好きな方ならこの意味もわかっていただけると思う。

ということでレーベル面。

画像6
ビートルズUKの第1作の初期だけ使われた黒地に金文字でパーロフォンの記載。「ゴールドレーベル」ということで界隈では通称「金パロ」と呼ばれる。マトはXEX 421-1N
画像7
画像8
スタンパー接写。も、見えないですね。すいません。
画像9
辛うじて「G」がみえるかと。

なおスタンパーはマトリクス番号(この場合「XEX 421-1N」がマトリクス番号)を時計の6時位置、とした場合に、9時の方向に数字(この場合は1)、3時方向に英字(この場合はG)が打たれている。

9時方向の数字、これはマザー・ナンバーを差し、「何個目のメタルマザーから作られたか」を示す。この場合は文字通り「1番目」となる。

ではこの3時方向の「G」、これは何か?というと、スタンパーコードである。このスタンパーコードの読み方がちょっとややこしい。アルファベットに数字を対応させて読むのだ。

ビートルズの場合はパーロフォン(EMI)からの発売なので、使われているコードは「グラモフォンコード」と呼ばれる。

GRAMOPHLTD

これが最初の文字G=1、と読み替える形になる。例えば、O=5、でありGT=19、でありMRT=429、となる。レコ屋の但し書きでは「2桁スタンパー」「3桁スタンパー」というような表記もされる。

余談だがDECCAレーベルでは「バッキンガムコード」とよばれ、アルファベットの並びは「BUCKINGHAM」、B=1、U=2、〜M=0、だ。

レコードも工業製品、特にスタンパー(レコードを作るときに使う、いわば型押し鋳型)はプレスを続けるうちにどんどん摩耗してきて使えなくなる(交換)。レコードというのはラッカーマスターと呼ばれる比較的ひ弱な原型から、最終的に複数の金属鋳型(スタンパー)を製造し、はんこを押すがごとく塩化ビニールをプレスし製造される。当然ながらラッカーマスターがだめになれば、新たにラッカーマスターを作ることになる(このラッカーマスターがいわゆるマトリクス、である)ということは、当然初期にプレスされた盤のほうが型としてもフレッシュであり、音も当然良いということになる。今回私が所有しているのはこの鋳型が一番最初に作られたもの=最も初期にプレスされたレコード、ということになるわけだ。

なおレコード製造に関する詳しい解説はぜひ下記の動画をご参照いただききたい。また、ビートルズのレコード全般に関する版の見分け等については井上ジェイ氏のムック本「ビートルズUK盤コンプリート・ガイド[増補改訂版]」をご参照いただきたい。

ビートルズUK盤コンプリート・ガイド[増補改訂版] (CDジャーナルムック)

今回は9時方向に「1」、3時方向に「G」、これがAB両面に入っている。これをまとめると「スタンパー1G/1G」ということになる。超初期、というか間違いなく「第一製造物」だ。

ちなみに、このアルバムのスタンパーは超初期でも1G / 1Rとか、その逆(1R / 1G)が多いらしい。なぜ1G / 1Gという形がほとんど流通していないのか?これ正直分からない。普通に考えれば完全初版のAB面スタンパーと捉えて良いかと思う。物珍しいらしく、ディスクユニオンの店員さんも過去2回しか見たことがないと言っていた。(ちなみに私所有のが2枚目。)

勝手な妄想だが、1G/1Gは一般流通はせず、メンバー及び関係者だけに配られた特別な盤だったのでは…なんてことだったら嬉しいな(笑)

そこで気になる、金パロ・モノのお値段…

さて気になるお値段の件。

たしか2018年頃に購入したと記憶している。

VG-という盤の評価なので良音ノイズレスという訳にはいかない。チリパチノイズあり、である。

ただ、状態はともあれ幻の?「1G / 1G」であるし…と思ったが、なんと値段もディスカウントされており、8万円ほどで購入できたと記憶している。

普通に考えればレコード一枚に8万円は高い…が、いいじゃないか。関係者に配られた(かもしれない)幻の1枚、というロマンにお金を払ったのだ。

モノラル盤にはモノラル針にレコ洗浄!

盤質はVG-なのだが、音飛びは無いので鑑賞には十分。もちろん以前紹介した「レコード洗浄」を数回行って細かいホコリも落とし切っていると思うが、取り切れないノイズは残っている。

ちなみにビートルズに限らず、60年代までに作られたモノラル盤なら多少のキズ盤はモノ針で聞くと意外にノイズが気にならないことも多い。現行のモノラル針で一番手に入れやすいのはDENONのDL-102だろうか。MCカートリッジだが昇圧トランスなしでも十分パワフルである。余裕がある方は試してもらいたい。

デノン Denon DL-102 MC型カートリッジ モノラル専用 DL-102 W18mm × H15mm × D38mm

盤質がいわゆるBC盤でも、致命的なキズでなければある程度の盤洗浄とモノラル針でEX-くらいの音質で楽しめるものも多い。洗浄スキルがある方、およびモノラル針を所有しているのであればBCランクの盤は狙い目である。詳しくはこちらの記事をご参照いただきたい。

もちろん試聴ができる環境で、致命的な傷(針飛び)が無いことを確認すべきではある。もし飛ばないのであれば、恐れずそしてためらわず買っていいかと思う。お得ですし。どうしてもクリアに聴きたいときはCDやサブスクハイレゾ音源に頼りましょうw

モノラルの破壊力!とにかく音圧がすごい!

さて、肝心の音について触れておきたい。

このアルバムの3RDプレスおよび4THプレスを所有しているのでそれらとの比較である。

一言でいうと破壊力が凄まじい!

1曲目の「I saw Her Standing there」のポールの掛け声「ワン、ツー・スリー・フォーォ!」、まずここから最高。

掛け声からの勢いなのか、ポールのベースがまずデカい(笑)。ちょっとパンクバンドじゃないか?っていうくらいにデカいのだ。どれくらいか?と言われると「The Beatles」(通称:ホワイトアルバム)のドイツDMM盤ほどではないが、それに次ぐくらい良く出ている。
一発録りで気合が乗っていた部分もあるのだろうが、ミックスがざらついてて気持ちいい。これはB面最後の曲「Twist and Shout」にも共通する。ジョンの声が割れがち歪みがちに聞こえるが、そこがまたいい。リミッターはオールオフ!ロック&ロール!

もちろん、ビートルズといえばコーラスワーク。これもしっかりきれいにきかせてくれる。

3曲目「Anna」なんかは特に顕著にハーモニーがきれいなのだ。高音域が微量かもしれないが後発盤よりもクリアに聞こえる。

今回改めてシングルカット・リマスターされるB面1曲目「Love Me Do」、こちらはあのイントロのハーモニカがとっても鄙びて鳴り響く。
まるでブルーズのアルバムか?というのんきな音色にリンゴのスネアとハイハットがパシッ!パシッ!パシッパシッ!、とあのリズムを刻む。
正直ギターの音は小さいな、と思うが、ハープとベースとドラム、これに合わせてフロント3人のコーラスワークが美しく、素朴なメロディを聞かせる。素材の良さが光る録音だ。こりゃ売れるわけだ。

B面2曲めの「P.S I Love You」はジョージのギターの箱鳴りがとても柔らかく暖かくて素敵。この曲聞くとほんとにジョージってギターセンスあふれるなぁ、とアマチュアギタリストの私としては感心しきり。

いや、改めて素晴らしいアルバムである。

やはりビートルズは「赤盤」・「青盤」のベスト盤でまとめ聴き、よりはオリジナル・アルバム単位で聴くべきだと再認識。

まとめ:やっぱモノラル!

もちろんモノラル盤なのでステレオのような音場の広さは感じられないが、その分ストレートで鮮烈な音を鳴らしてくれる。ビートルズのイメージは人それぞれであるが、「あー、この人たちはこの頃ロックンロールやってたんだなー」と素直に思えるストレートな演奏を聴くことができる。

もちろん金パロというプラシーボ効果があるのは否めないし、本作の初期ステレオが左右泣き別れミックスなので圧を感じにくいというのもあるかとは思う。

名著「アナログ・ミステリー・ツアー」にも記載があるが、版が進むにつれてこのフレッシュさが失われていく(湯浅氏いわく「音が湿っていく」)というのは正しい表現だなと私は思った。ビートルズの最初期だけあってやはり小気味好いロックンロールナンバーが多い作品なので、力強く、若々しい音が望ましいことは間違いない。

その点でこのいわゆる「金パロ・モノ」は値段は高いが、バリッと乾いてパンチのある音を体感できる貴重な一枚だと思う。機会があればぜひ金でなくてもモノラル盤を、しかもレコードで聞いてもらいたい。

ご一読ありがとうございました。

アナログ・ミステリー・ツアー 世界のビートルズ 1967-1970 (P-Vine Books)

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