ビル・エヴァンス「ビル・エヴァンス・ライブ・イン・トーキョー」:伝説の日本公演を愉しむ

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さて、今週もビル・エヴァンスだ。春になるとビルまつりが続く我が家。繊細なピアノの音色は暖かくなり始めた春のぽかぽか陽気にも、ぐっと冷え込む春特有の悪天候の日にもよく馴染む。オールラウンダーである。

1973年1月20日、東京の郵便貯金ホール(現在の住友生命新宿ビル内)で行われたビル・エヴァンス初の日本公演。その歴史的瞬間を捉えたライブアルバム「ビル・エヴァンス・ライブ・イン・トーキョー」は、ジャズ史に残る名盤として今もなお輝きを放っている。ビル・エヴァンス(ピアノ)、エディ・ゴメス(ベース)、マーティ・モレル(ドラムス)という、当時のエヴァンス・トリオの最高のパフォーマンスが記録された本作は、ジャズの精神性、音楽の美しさ、そしてライブならではの熱気を余すことなく伝えている。

エヴァンスの生涯における「東京ライブ」の位置づけ

1970年代初頭、ビル・エヴァンスはキャリアの円熟期を迎えていた。しかし、同時に彼の精神は疲弊し、薬物依存の影響も深刻化していた。

そんな状況下で行われた日本公演は、彼にとって大きな転換点となったのではないか?と勝手に想像している。

日本の聴衆の温かい歓迎と、音楽に真摯に向き合う姿勢は、エヴァンスの心を癒し、再び音楽への情熱を取り戻させた。この後リリースされるオリジナルアルバムの数々への影響もあったのではないか?と。(日本人だからかもしれないが)

ともかく、このライブアルバムには、彼の音楽に対する真摯な姿勢と、聴衆への感謝の気持ちが込められている。

卓越したトリオの演奏:緊密なアンサンブルと個性の光彩

このアルバムの演奏者、ビル・エヴァンス(ピアノ)、エディ・ゴメス(ベース)、マーティ・モレル(ドラムス)は、それぞれがジャズ界を代表する名手であり、彼らの演奏は高いレベルでの調和と個性の光彩を放っている。

エディ・ゴメスのベースは、まるで歌うような旋律と、豊かなハーモニーが特徴だ。彼の演奏は、エヴァンスのピアノと完璧に呼応し、音楽全体に一体感と深みを与えている。マーティ・モレルのドラムは、エヴァンスのピアノスタイルに寄り添いながらも、力強く繊細なリズムで音楽を支えている。彼のドラムは、単なる伴奏にとどまらず、音楽に推進力と躍動感を与えている。

特に、エディ・ゴメスは1966年から1977年までの11年間、エヴァンスの最長のトリオのベーシストとして在籍し、エヴァンスの音楽を支え続けた。エヴァンスは、当時を振り返って「エディは最高のベーシストだった」と語っている。

以下にこのトリオの他の録音を並べておくので気になった方はこちらもチェックいただきたい。

アルバムの背景:日本での熱狂とエヴァンスの心情

エヴァンスにとって初の日本ツアーは、最終公演となった東京郵便貯金ホールでのステージも含め、熱狂的な歓迎を受けた。当時の日本のジャズファンは、エヴァンスの繊細かつ内省的なピアノ演奏に深く魅了され、彼の来日を心待ちにしていた。エヴァンス自身も、日本の聴衆の熱心な姿勢と温かい歓迎に感激し、最高のパフォーマンスで応えようとしたという。その結果が、この歴史的なライブアルバムに結実したと言えるだろう。

OJC再発盤の魅力:アナログレコードならではの音質

さて、それでは私の所有している盤について、である。

今回はどなたでも入手できるOJC再発盤だ。

すべてカタカナ表記のタイトルが潔くておしゃれに感じる。エヴァンス、ではなく、エバンス、という表記もレトロ感があってよい。

裏ジャケはこんな感じ。ビルの髪型が宮史郎している。蝶ネクタイもやたらデカい。昭和な感じがとてもする。

米ファンタジー・レコードの再発盤はOJCだけあってしっかりとした作りだ。盤質も質量がある程度あり、安定感も高い。

さて、OJC(オリジナル・ジャズ・クラシックス)から再発されたFANTASY盤レコードで「ビル・エヴァンス・ライブ・イン・トーキョー」を聴くと、その音質の素晴らしさに改めて驚かされる。アナログレコードならではの暖かく深みのある音質は、デジタルの音源では決して味わえない。特に、エディ・ゴメスのベースの音色は、レコードで聴くとその太さ、安定感、そして豊かな倍音が際立ち、まるで目の前で演奏しているかのような臨場感がある。

一方、サブスクリプションサービスやデジタル音楽配信で聴くと、どうしても音の伸びや低音域の豊かさが損なわれてしまう。エヴァンスのピアノの繊細なタッチ、ゴメスのベースの深い響き、そしてモレルのドラムの力強いリズム。これらの要素が一体となって生み出す音楽の美しさを、最大限に堪能するためには、やはりアナログレコードでの鑑賞がおすすめだ。

おすすめの一曲:「My Romance」:エヴァンスのロマンティシズム

アルバム収録曲の中でも、特に聴き逃せないのが「My Romance」だ。この曲でのエヴァンスの演奏は、ロマンティックな雰囲気に満ち溢れ、聴く者の心を捉えて離さない。彼のピアノは、美しいメロディーを奏でながら、随所に斬新なアイデアを織り込み、聴く者を飽きさせない。エディ・ゴメスのベースも、エヴァンスのピアノに寄り添い、音楽に豊かな表情を与えている。

「My Romance」は、ロレンツ・ハート作詞、リチャード・ロジャース作曲のスタンダードナンバーだ。エヴァンスは、この曲を数多くのライブやレコーディングで演奏しており、彼にとって重要なレパートリーの一つだったと言える。彼の演奏は、原曲の美しさを最大限に引き出しながら、彼自身の内面から溢れ出る感情を表現している。

ゴメズのボウイングによるベース、モレルの激しいブラシワークなどインタープレイも充実している。

まとめ:エヴァンスの音楽の深みを堪能する

「ビル・エヴァンス・ライブ・イン・トーキョー」は、ビル・エヴァンスの音楽的ヴィジョンを完璧に捉えた作品だ。OJC再発のFANTASY盤レコードで聴くことで、彼のピアノ演奏の奥深さを再認識できるだろう。特に「My Romance」のような曲では、彼の音楽が持つロマンティックな雰囲気が無限に広がり、聴く者を魅了する。このアルバムは、エヴァンスの音楽史における重要な一部分であり、彼の音楽が持つ深みや繊細さを学ぶ上で非常に適した作品だ。

レコードでも大変入手しやすく、比較的安価であるので、気になった方はぜひ中古レコード店で探してみてほしい。

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