さて、先週に引き続き、今週もビル・エヴァンスだ。
今週はオリジナル盤ではなく、ふつーの国内盤のLPなのだが、大変に音もよくまた演奏も良い作品、その名も「The Bill Evans Trio “Live”」を取り上げたい。
概要
ビル・エヴァンス・トリオのライブアルバム「The Bill Evans Trio “Live”」は、1964年に録音され、1971年にVerveからひっそりとリリースされた。カリフォルニアの「トライデント」でのライブで、このときエヴァンスは36歳。このアルバムは、エヴァンスの音楽性を色濃く反映したトリオのベスト盤的セットリストを収録している。スタン・ゲッツとの共演を終えたばかりの時期だからか演奏も生々しくパワフルであり、まだヘロヘロ?になる前の溌剌としたエヴァンスのピアノプレイが味わえる。
メンバー
- Bill Evans – Piano
- Chuck Israels – Bass
- Larry Bunker – Drums
ビル・エヴァンス・トリオは、幾度かのメンバーチェンジを経て、様々なサウンドを追求してきた。本作のメンバーであるイスラエルとバンカーは、1963年から1966年までトリオを支え、エヴァンスの音楽性を大きく開花させた。
特に、バンカーの加入は、トリオのサウンドに大きな変化をもたらした。彼の的確なドラミングは、エヴァンスのピアノを際立たせ、トリオの演奏に安定感と推進力を与えた。このトリオが生み出す親密で洗練されたサウンドは、聴く者を静謐な空間へと誘う。
収録曲
曲はエヴァンストリオの代表曲のオンパレードである。これはなかなかにすごい。ここに「Waltz for Debby」が加わればもはやベスト盤といっても過言ではないセットリストである。
- “Nardis” (Miles Davis) – 6:00
- “Some Day My Prince Will Come” (Frank Churchill, Larry Morey) – 6:20
- “Stella by Starlight” (Ned Washington, Victor Young) – 6:20
- “How My Heart Sings” (Earl Zindars) – 4:45 1
- “‘Round Midnight” (Thelonious Monk, Cootie Williams) – 6:06
- “What Kind of Fool Am I?” (Leslie Bricusse, Anthony Newley) – 8:00
- “The Boy Next Door” (Ralph Blane, Hugh Martin) – 5:50
- “How Deep Is the Ocean?” (Irving Berlin) – 5:24
特におすすめの一曲
このアルバムの中で特におすすめの一曲は「’Round Midnight」だ。この曲は、セロニアス・モンクの代表曲であり、エヴァンスのピアノが、楽曲の持つミステリアスな雰囲気を際立たせる。トリオのインタープレイも見事で、聴く者を深く魅了する。バンカーのドラムが結構ハードなところはモチアンと違ってスリリングだし、チャックのベースもラファロのそれとは違い、メロディを刻むというよりはリズムの先に音をつなぐ、といった趣を感じる。
YOUTUBEに音源があれば・・・と思って探し見てみたが、見つからなかった。雰囲気だけでも。
所有のレコード盤について
それでは私が所有している盤を見ていこう。

先述の通り、私の所有は日本国内盤。おそらく1977年発売のものと思われる。なおUSオリジナル盤は1971年だ。

裏ジャケ。こちらもオリジナル盤と同等。左下にポリドールに記載があるくらいか。

レーベル面。アルバムタイトルのみ日本語表記。

国内盤なので当時のライナーノーツもついている。藤井肇氏によるもので、内容は本作の説明というよりはエヴァンストリオの概要みたいな部分が大部分を占める。右半分は収録曲の解説である。
音楽性と聴きどころ
このアルバムは、エヴァンスの音楽性が円熟期を迎えていた時期の演奏を捉えている。彼のピアノは、繊細でありながら力強く、感情の機微を巧みに表現する。チャック・イスラエルのベースは、エヴァンスのピアノに寄り添い、楽曲に深みを与える。ラリー・バンカーのドラムは、的確なリズムで演奏を支え、トリオの一体感を高める。
特に聴きどころは、エヴァンスのバラード演奏だ。彼のピアノは、聴く者の心に深く響き、感情を揺さぶる。また、トリオのインタープレイ(相互作用)も見事で、3人が互いに呼応し、会話するように演奏する様は、まさに芸術だ。
隠れた名盤としての魅力
「The Bill Evans Trio “Live”」は、エヴァンスの数多くの作品の中でも、じつはあまり目立たない存在だ。レビューやジャズ推薦盤などでもほぼ触れられるのを見たことがない。いわば隠れた名盤である。
- 1960年代初期、エヴァンスの音楽性が最も充実していた時期の演奏を記録していること。
- 西海岸ツアーという、特別な状況下でのライブ演奏であること。
- トリオのインタープレイが、極めて高いレベルで実現されていること。
- 収録曲の完成度が非常に高いこと。
- 録音状態が非常に良いこと。
- 国内盤レコードでも非常にクリアで芳醇なサウンドが楽しめること。
- ビル・エヴァンス関連のレコードとしては入手しやすい価格であること。
これらの要素が重なり合い、本作は、エヴァンスの音楽性を余すところなく伝える、貴重な作品となっている。
そして何より、あまり気づかれてないせいか、レコード店でもそこまで高値がついていない。私の所有している国内盤は2000円程度、USオリジナル盤もおそらく5000円程度で手に入る。いわゆる「ラファロ3部作」やスタジオレコーディング盤に比べると圧倒的に知名度が低いのがその理由だと思われる。
ちなみにCDでも発売されている。2019年にはアナログLPも再発されたようだ。(参照はこちら)
新たな世代のジャズファンにも、この名盤が再発見される機会が生まれた。エヴァンスの音楽は、時代を超えて、今もなお多くの人々を魅了し続けている。
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