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『Kestrel』:レコマニア泣かせのレア盤、その伝説的名盤の魅力を再発盤からレビューする

Disk Review

Kestrel(ケストレル)のファーストアルバム『Kestrel(ケストレル)』は、1970年代のプログレッシブ・ロックシーンに新たな可能性を示した傑作として知られている。このアルバムは、バンドの独創的なサウンドと高度な演奏技術を存分に発揮した作品であり、今なお多くのプログレファンから愛され続けている。

バンド紹介

Kestrel(ケストレル)は、1970年代前半にイギリスのロンドンで結成されたプログレッシブ・ロックバンドだ。メンバー構成は以下の通り:

  • Dave Black : Guitar, Vocals
  • John Cook : Keyboards, Guitar
  • Tom Knowles : Lead Vocal
  • Fenwick Moir : Bass
  • Dave Whitaker : Drums

彼らは複雑な楽曲構成と高度な演奏技術、そして独特な音楽性で注目を集めた。各メンバーがそれぞれの楽器で卓越した技術を持ち、それらが見事に融合することで、メロディアスでジャズ・ロック風なKestrel独自のサウンドを生み出している。

音楽的な注目ポイント

本アルバムは、英国のマニアックなレーベル、キューブ・レコーズと契約を果たして1974年にレコーディングを敢行、そして翌1975年に同レーベルから発表された、彼ら唯一のスタジオ・アルバムだ。プログレッシブ・ロックの本質的な特徴を見事に体現した複雑な音楽構造、予測不能な展開、そして高度な音楽的技巧が、アルバム全体を通して一貫して表現されている。

楽曲は単なる音の羅列ではなく、緻密に構築されたサウンドスケープとして機能している。クラシック音楽、フォークロック、ジャズなど、多様なジャンルの要素が有機的に融合し、独自の音楽世界を創造している。

アルバムは各曲とも非常にメロディアスでそれぞれ聞くのも楽しいが、全体を通して一つの大きな音楽物語としてとらえることもできるような気がしている。リスナーを飽きさせることなく音楽的な旅へと誘う、適度なポップ感。もしかしたらこのような芸風が1975年のイギリスではもはや時代遅れ?だったのかもしれない(このあとすぐにパンクが隆盛するわけだし)。ただ、たった1作しか残していないとはいえ、Kestrelは自身たちの音楽的アイデンティティを確立しつつも、多様性を持った作品を生み出すことに成功していると私は思う。

再発レコード音源の評価

さて、私がこのアルバムと出会ったのは御茶ノ水のジャズ喫茶「JAZZ OLYMPUS」で不定期に行われていたイベント「ロック喫茶変身イベント」である。通常はジャズオンリーのジャズ喫茶で、このイベント日だけはロックが演奏される。コロナ禍前はおおよそ1〜2ヶ月に1回開催され、足繁く通ったものだ。毎回貴重なオリジナル盤を、JBLのスピーカー「オリンパス」で大音量で楽しむというもので、毎回1枚いわゆる「メガレア盤」といって良いレコードも演奏される(例えばキング・クリムゾンの「宮殿」マト1盤や以前書いたイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」メンバーサイン入りプロモ盤、など)。

今回紹介のケストレルもレア盤、として紹介された。最近はオリジナル盤を店頭でお見かけすることはほぼないが、昔一度20万ほどの値がついていたのを記憶している。

近年、このアルバムは高品質のアナログレコードとして再発された。特筆すべきは、この再発盤が韓国製であることだ。韓国のレコード製造技術は近年急速に向上しており、この再発盤もその高い技術力を証明するものとなっている。

今回私が入手したのは、この韓国復刻盤である。未開封で4500円ほど。カラーヴァイナルであった。

シールドされているので購入前に中身を確認することはできなかったが、なかなかきれいな盤面(模様が)で気に入った。この配色の意味はよくわからないが、プログレな感じはする。

オリジナルマスターテープから丁寧にリマスタリングされたこの再発盤は当時の音源の魅力を最大限に引き出すことに成功している。特に注目すべきは低音域の豊かさと高音域の透明感だ。ベースやドラムの低音が力強く響きながらもキーボードやギターの繊細な音粒立ちも明瞭に聴き取れる。

またステレオ感も見事に再現されており各楽器の定位が明確であり音場も広がりを感じることができる。これは韓国製造技術が持つ精密さとオリジナル音源への敬意が結実した結果と言えるだろう。正直、はじめは「韓国盤?」と訝しんでいたのだが、一聴してその疑念は吹き飛んだ。欧米の再発盤となんら変わりないクオリティである。

アナログ特有の温かみある音質はKestrel の音楽性をより引き立てておりデジタル音源では味わえない魅力がある。私は本作をもともとCDで所有しているのだが、特にアコースティック楽器やエレクトリック楽器それぞれ細かなニュアンスまで忠実に再現されている点はレコードの素晴らしい点だと思う。オーディオファイルにも満足度高い仕上がりとなっている。

所有のCDはデジパック仕様。こちらはこちらでいい音だがレコードのほうが雰囲気があってより良いように個人的には感じる

この再発盤は単なるノスタルジーではなく現代技術によって過去名盤を新たな形で蘇らせた好例と言える。オーディオファイルやプログレッシブ・ロックファンには非常に満足度高い再発盤となっている。

まとめ

Kestrel のファーストアルバム『Kestrel(ケストレル)』は1970年代プログレッシブ・ロックシーンでもメジャーなレア作品といえる。複雑な楽曲構成、高度な演奏技術そして独特な音楽性が見事融合し今なお色褪せることない魅力放っている、にもかかわらず、マイナーな知名度。しかしその道を知る人にとっては極めてよく知られた一枚である。

近年、韓国製の再発レコードがでたことで、レコードでこのアルバムの魅力を楽しむことができるようになったのは僥倖である。近年のレコードブームも相まって、新たなファン層開拓にも一役買っているのではないだろうか。高品質な再発盤の登場で若い世代リスナーが旧作に触れる機会が増えたことはプログレッシブ・ロック界にとっても大きな意味を持つ。

Kestrel の『Kestrel(ケストレル)』はレアだけが売りではない名盤である。プログレッシブ・ロックファンもちろんあらゆる音楽ファンにとって聴く価値ある一枚と言えるだろう。

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